人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2015年 05月 23日

UWG #02 「彼岸の川」

彼岸の川
2012.09.22


昨年9月、禁漁間近になって現れた台風は各地に甚大な被害をもたらし、川の形を大きく変えた。
台風が去って、ぎりぎり釣りができるようになった頃に当時よく訪れていた桂川の支流へと足を運んでみたけれど、
腰上までの水深があった淵が埋まり、密集していた葦は文字通り根こそぎ流されていた。
清々しいほどに様変わりした川には、表面をヤスリで磨かれたような石が転がり、磨ぎ汁のような青白い水が流れていた。

春になって訪れた狩野川の支流も同じ状況だったようで、遡行が困難なほど生え盛っていた河岸の葦は無くなっていた。
しかし、遡行がしやすくなった反面、魚が釣れるようになったかというと、そういう訳でもなかった。
釣れるには釣れるが、20センチに満たない小型のアマゴが多く、良型は姿すら見られなかった。
密集して生える葦はアマゴの餌となる昆虫や小魚のを育み、またアマゴ自身が隠れる隙を作り出す。
葦が無くなると鳥などの外敵から狙われやすくなるだろうし、何よりも釣り人が攻めやすい分、
良型のアマゴから居なくなっていくのは火を見るより明らかだった。


UWG #02 「彼岸の川」_d0000101_015482.jpg



岩手への秋ヤマメ旅が終わり、9月も終盤に差し掛かろうとしていた週末に、僕は久しぶりに狩野川支流を訪れていた。
朝晩は少し肌寒くなったとは言え、温暖な伊豆の気候はまだまだ秋からは程遠かった。
しかし、河岸のいたるところには彼岸花の赤い花が目立ち、季節は徐々に進行していることが見て取れた。


UWG #02 「彼岸の川」_d0000101_023190.jpg



この支流も例に漏れず、釣れる魚と言えば20センチ以下のアマゴばかりで、
ところどころでそれ以上の良型の姿は見えるものの、ルアーを積極的に追う気配は見られなかった。
支流を覆っていた両岸の葦はようやく生え揃ってきて、川は元の姿を取り戻し始めていたが、結局良いアマゴを手にすることはできなかった。

一向に良型が釣れないその支流の遡行を諦め、僕は別の支流に入ってみることにした。
川沿いに走る道を歩いていると、入ろうとしていた支流の上流に釣り人の姿が見られた。
この支流に限らず、9月の残り少ない釣期を惜しんでいるかのように皆、川に繰り出していた。
入渓点の対岸には別の支流が合流している。
いつもの水位ならば対岸に渡ることすらできないが、
渇水により水位の下がった川を横切ることは容易で、僕はその支流を遡ることにした。

川幅は狭かったが、陽当たりが良いせいか両岸の葦はよく育っていて、
しばらく遡っていくと、この辺りの支流ではよく見られる小堰堤が行く手に見えた。
小堰堤の上は両岸に葦がせり出しており、川幅をさらに狭くしていたが、いかにもアマゴが付きそうな場所だった。

小堰堤の下からバルサミノーをキャストし、右岸にせり出した葦の際を通したとき、わずかに何かが触れた感じがした。
一度フックに触れたアマゴは、次のキャストで再度ルアーを食うことは殆ど無い。
こうした薄いバイトのみで釣り逃す魚が数多くいることことは確かだ。
しかし、次のキャストでミノーを再度同じコースに通すと今度はしっかりとティップが絞り込まれた。

堰堤下からキャストしていたため、堰堤の下に魚を落としてランディングネットで掬うと、
今朝まで釣ってきたアマゴとは違う良型のアマゴだった。


UWG #02 「彼岸の川」_d0000101_031224.jpg



UWG #02 「彼岸の川」_d0000101_032960.jpg



尺にはわずかに満たないが、筋肉質な体躯と厳つい表情の雄。
果たしてこの魚が去年のあの大水を乗り越えて秋まで生き抜いた一尾なのかどうかは分からない。
けれど、一年という時間を掛けて、川がだんだんと生命感を増してきていることが何より嬉しかった。


Tackle Data
Rod » エキスパートカスタムボロン EXC-510ULX
Reel » カーディナル3
Line » スーパートラウトアドバンスVEP 5lbs
Leader » アクロン フロロステルス3.5X
Lure » ボウイ50S

by pioneerfield | 2015-05-23 00:04 | Play Back UWG


<< 小休止      本流リトライ >>