2008年 03月 22日
どうも釣りばかりに気を取られていると、川にしか意識が向かないものだが、田畑を縫って流れていたり、近くに民家があったりするからこそ、里川はその土地の生活の匂いがする。里に春が訪れるこの時期は、川から上がって車を停めてある場所に戻る間に、特に鳥の鳴き声や50ccバイクのエンジン音、草刈り機の音、ようやく七分咲きになり始めた梅の花や畑の傍に植えられた河津桜が気になる。 旅とは何も高名な観光地を巡るばかりが旅ではない。こうした人の生活が染みる里川を歩くことこそが贅沢だと言える旅もある。 前置きはさておき、今回訪れた二つの里川。二日間の釣行の一日目の夕方に入ったのは、自分が好きな川のひとつである桂川支流の菅野川だった。 この日は午後からの釣りだったが、本流や別の支流のゴミの多さにうんざりとしていた。魚をバラしてばかりで、まだ一尾もキャッチしていないせいもあってか、夕方ぐらいは気持ち良く釣りのできる菅野川を選んだ。 自分がよく釣り上がる区間は、川幅は狭いがヤマメが多い。サイズは期待できないが典型的な里川の釣りを堪能できる場所だ。この日は平日に休みを取れたこともあって、おそらく先行者はいないであろう緩く狭い流れを遡っていった。その期待に漏れず、小さいながらも奇麗なヤマメがコンスタントにミノーを追った。トレースコースを何度も変えながら、最も食わせ易い流速のスポットで食わせる。魚が追うのが見えると、断然気分が高まる。 途中で、裕に尺を超えるイワナがミノーを追うもフッキングに至らず、悔しい思いをするが、すぐに上流では再びヤマメやニジマスが追う。釣りにはリズムというものがあって、この川に来るまではどうもそのリズムが合っていなかったのかもしれない。さっきまでの釣りが嘘であるかのように、テンポ良く釣り上がっていく。この川は自分の釣りのリズムに合う川だということだ。 さて、まだあと一日残っている。釣り逃した尺イワナを朝一で再び狙ってみるのも良いが、どうせなら別の川へ旅をしよう。少し離れてはいるが、富士吉田から御殿場を抜けて、沼津へと下り、途中の温泉で朝まで仮眠を取る。次の日に向かうのは狩野川である。 狩野川は昨年度から支流が期間限定でルアーの解禁となり、今年はいよいよ本流が解禁されるなど、注目度が高いフィールドだ。早速本流を攻めてみるという手もあったが、朝のうちに魚が残っているであろう支流に入ることにした。 流れの強い瀬には魚はついておらず、流速の緩いヒラキなどを中心に、ディープダイバーで比較的スローなトゥイッチングをかけていく。魚影はそこそこ濃そうだが、ヒットに結びつくものは少ない。水温が若干低いせいもあって、やはりアップストリームで攻めていくのには限界があるのかもしれない。そこで攻め方を変えて釣り上がりながらもダウンで流していくという非効率的な釣りに出た。 しかしながら、この釣り方が功を奏したようで、すぐにヒットがあった。ここで釣れてくるのはヤマメではなく、アマゴだ。サイズは15センチ前後が中心で、20センチを超えると「良型」になるのかもしれない。 それにしても良い里川だ。すぐ隣の半島にこんな良い里川があるなんて、意外だった。魚のサイズには決して満足はいかないが、それでも何回か通ってみたくなる、そんな川だ。狩野川と言えば、鮎が有名な川だが、アマゴの美しさも負けてはおらず、春の陽気の下で釣り進むのが心地よい。午後には少し本流域も探ってみたが、こちらもとても家から2時間強で行ける川とは思えない渓相。もっと良いシーズンになれば魚が出るかもしれない。 さて、いくつかの支流を回って、夕方には朝の支流に戻ってきた。既に何人かの釣り人が入っていることは間違いないのだが、釣り下って行くとすぐにアマゴの反応があった。午前中はディープダイバーを多用したが、水温が上がっていることも考慮して、シャローランナーでダウンクロスの釣りを続ける。夕マヅメが近づくにつれて魚の反応は良くなり、小さいながらも5,6匹の綺麗なアマゴと出会えることができた。 そこは人々の生活のそばにある里川。暗くなりかけた川沿いの道を歩いて戻るるとき、畑の傍らに植えられた河津桜を目にした。これに続いて、そろそろ、里には桜の花が咲く季節になりそうだ。そんな中で釣りができるなんて、何と幸福なことだろうか。日本に暮らし、日本の里川で鱒釣りができることを、誰ともなく感謝したい。 Tackle Rod:サーフェイストゥイッチャーSTS-501Si Reel:イグジスト2004 Line:シルバースレッドアイキャッチPE0.6号+フロロカーボン3lbs Lure:バフェットSD43、SKミノー50SD、ツインクルTWS45
by pioneerfield
| 2008-03-22 23:52
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